コクテンギ

植物情報:コクテンギ(黒点木)の詳細・その他

コクテンギ(黒点木)とは

コクテンギ(黒点木)、学名Pittosporum tobiraは、トベラ科トベラ属に属する常緑低木です。その名前は、葉に現れる黒い斑点に由来すると言われています。しかし、この黒い斑点は病気や害虫によるものではなく、植物本来の生理現象によるものなのです。

原産地は日本、台湾、中国南部とされており、特に日本の本州、四国、九州の海岸付近に自生しています。その丈夫さと潮風に強い性質から、古くから庭木や公園樹、生垣として広く利用されてきました。また、その独特の香りと美しい花、そして実も観賞価値が高く、園芸品種としても人気があります。

形態的特徴

コクテンギの葉は、革質で厚く、艶があります。長さは5~10cm程度で、先端は丸みを帯び、基部はやや細くなっています。葉の表面は濃い緑色で、裏面はやや白っぽいこともあります。前述の通り、葉に黒い斑点が現れることがありますが、これは炭疽病などの病気ではなく、植物の生理的なもので、観賞上の欠点ではありません。むしろ、この特徴的な斑点模様が、コクテンギの愛好家には魅力の一つとして捉えられています。

開花時期は、春から初夏にかけて、4月~6月頃です。花は、葉腋(ようえき:葉と茎の間)に数個ずつ集まって咲きます。花弁は5枚で、白色または淡いクリーム色をしており、星形に開きます。この花の最大の特徴は、その香りです。甘く、ややスパイシーな独特の香りを放ち、香りの良い花木としても知られています。この香りは、夜になると一層強くなる傾向があります。

果実

果実は、球形で、熟すと黄色またはオレンジ色になります。表面はやや革質で、割れると中から数個の種子が現れます。種子は黒色で、粘液に包まれています。果実は冬の間も木に残ることが多く、庭木としての彩りにもなります。ただし、一部の品種では結実しにくい場合もあります。

栽培・管理

植え付け

植え付けの適期は、春(3月~4月)か秋(9月~10月)です。日当たりの良い場所を好みますが、半日陰でも育ちます。土壌は、水はけの良い場所であれば、特に選びません。粘土質の土壌の場合は、堆肥などを混ぜて水はけを良くすると良いでしょう。

水やり

乾燥には比較的強いですが、極端な乾燥は避ける必要があります。植え付け後しばらくは、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。根付いてしまえば、夏場の乾燥期以外は、自然の雨に任せても大丈夫な場合が多いです。ただし、鉢植えの場合は、土の乾き具合をよく見て、適宜水やりを行います。

肥料

肥料は、生育期である春(3月~4月)と秋(9月~10月)に、緩効性の化成肥料や有機肥料を株元に施します。与えすぎると葉ばかり茂って花つきが悪くなることもあるので、適量を心がけましょう。

剪定

剪定は、樹形を整えるためや、風通しを良くするために行います。開花後(6月~7月頃)に行うのが一般的です。混み合った枝や、不要な枝を剪定します。刈り込みにも強く、生垣にする場合は、時期を選んで刈り込むことで、密な樹形を作ることができます。ただし、花芽は前年の秋にできているため、開花期に近い時期に強く剪定すると、花が少なくなってしまうことがあります。

病害虫

コクテンギは、比較的病害虫に強く、丈夫な植物です。しかし、風通しが悪かったり、多湿な環境だと、カイガラムシやアブラムシが発生することがあります。早期発見・早期駆除が大切です。多湿による根腐れにも注意が必要です。

利用方法

庭木・生垣

その丈夫さ、潮風に強い性質、そして美しい葉姿から、庭木や生垣として非常に人気があります。潮風の当たる海岸沿いの地域でもよく育つため、防風林としても利用されることがあります。生垣にする場合は、定期的な剪定で形を維持することで、景観を保つことができます。

花材・香り

春に咲く星形の花は、その美しさだけでなく、独特の甘い香りが魅力です。切り花としても利用され、その香りは空間を豊かにします。香りの良い植物として、庭のアクセントに植えられることも多いです。

園芸品種

コクテンギには、葉に白い斑が入る「ギンロ(銀露)」や、葉が細く切れ込む「チリメンコクテンギ」などの園芸品種も存在し、その多様性も魅力の一つです。これらの品種は、それぞれ異なる趣があり、個性を活かした庭づくりが楽しめます。

まとめ

コクテンギ(黒点木)は、その独特な葉の模様、春の甘い香りの花、そして丈夫で育てやすい性質から、日本の庭園や生垣に欠かせない植物の一つと言えるでしょう。潮風に強く、病害虫にも比較的強いため、初心者でも育てやすいのが魅力です。庭木として、あるいは香りの良い花木として、その存在感を発揮してくれるでしょう。葉の黒い斑点も、この植物の個性として楽しんでみてはいかがでしょうか。