トウテイラン

花

2025.10.23

トウテイラン：詳細・その他

トウテイラン（越高蘭）は、ゴマノハグサ科（あるいはオオバコ科）ルリトラノオ属に分類される、日本原産の多年草です。その名前は、「空」に「点」のように青い花を咲かせる様子から名付けられたとされています。

主に日本海側の海岸や河川敷、岩場などに自生し、日当たりの良い、乾燥気味の環境を好みます。その清楚で可憐な花姿から、古くから愛されてきた植物の一つです。

トウテイランの草丈は、環境にもよりますが、一般的に20～50cm程度に成長します。株元から数本の茎を伸ばし、やや横に広がるように生育します。茎は細くてしなやかで、風に揺れる様子が趣があります。

葉は対生し、卵形から披針形をしています。葉の縁は全縁か、浅くギザギザしているものがあります。葉の表面はやや光沢があり、濃い緑色をしています。葉の裏側はやや淡い緑色です。

トウテイランの最も魅力的な特徴はその花です。7月～9月にかけて、葉腋（葉の付け根）から細長い花茎を伸ばし、そこに小さな青紫色の花を多数、穂状に咲かせます。花は径1cmほどのラッパ状で、5裂した唇弁が特徴的です。花の中心部には濃い紫色の筋が入り、アクセントとなっています。

花色は、淡い青色から鮮やかな青紫色、稀に白色のものも見られます。その涼しげな色合いは、夏の暑さを和らげるかのようです。

花後には、小さな蒴果（さくか）ができます。熟すと2つに裂けて、微細な種子を放出します。

トウテイランは、日本海側の比較的温暖な地域に多く分布しています。特に、海岸沿いの砂地や礫地、河川敷の石混じりの土壌、崖地など、水はけが良く、日当たりの良い場所を好みます。このような環境は、栄養分は乏しいものの、過湿にならないため、トウテイランの生育に適しています。

自生地の環境からもわかるように、トウテイランは乾燥や強風、潮風にも比較的強い植物です。しかし、極端な高温多湿には弱い傾向があります。

開花時期は夏から秋にかけてで、この時期に青い花を次々と咲かせます。昆虫による受粉が主で、風にも種子を散布されると考えられます。

栽培においては、水はけを最も重視します。市販の草花用培養土に赤玉土や鹿沼土、軽石などを3割程度加えて水はけを良くした土が適しています。乾燥気味を好むため、粘土質の重たい土は避けるべきです。

日当たりの良い、風通しの良い場所を好みます。夏の強い日差しには多少葉焼けを起こす可能性もありますが、基本的には日向で管理するのが良いでしょう。多湿を嫌うため、梅雨時期などは雨の当たらない場所に移動させるか、鉢の水やりに注意が必要です。

乾燥気味を好むため、土の表面が乾いたら、たっぷりと水を与えます。ただし、過湿にならないように、鉢底から水が流れ出すのを確認してから水やりを終えるようにしましょう。特に夏場は乾きやすくなりますが、冬場は徐々に回数を減らします。

元肥は控えめにします。生育期である春と秋に、液体肥料を月1～2回、薄めて与える程度で十分です。窒素分が多すぎると葉ばかりが茂り、花つきが悪くなることがあります。

2～3年に一度、春か秋に植え替えを行います。根詰まりを防ぎ、株を健康に保つためです。植え替えの際に、株分けを行うことも可能です。株元から複数の芽が出ている場合、手で分けられる範囲で分け、それぞれを植え付けます。

比較的病害虫には強い方ですが、風通しが悪いとうどんこ病にかかることがあります。また、アブラムシがつくこともありますので、定期的に葉の様子を確認し、発生した場合は早期に対処しましょう。

庭植えはもちろん、鉢植えとしても楽しめます。特にロックガーデンやドライガーデン、海辺の庭などに最適です。その涼しげな花色は、夏の暑い時期に視覚的な涼しさをもたらしてくれます。群生させると見応えがあり、淡い青色の絨毯のような景色を作り出します。

切り花としても利用できます。水揚げをしっかり行い、涼しげなアレンジメントに活用してみてはいかがでしょうか。和風、洋風どちらの雰囲気にも馴染みます。

トウテイランは、日本の自然が育んだ、清楚で美しい野の花です。栽培は比較的容易で、乾燥や日当たりを好む性質を理解すれば、庭や鉢で元気に育ちます。夏の、静かな庭に鮮やかな青を添えてくれるトウテイラン、ぜひ、その魅力を楽しんでください。